北海道の『地』と『人』のバイブレーション


「二風谷でアイヌの人達の『一万年祭』というのがあるけど、一緒に行かないか」
10近く年前の夏の日、
古い友人のTから突然に提案されたのでした。


当時の私は「自分が何をすべきなのか」もハッキリみつからないまま、
「旅」と「ひと」を主なテーマに写真を撮影したり……
日々をうっちゃって過ごしていた。


Tは不思議に惹き付ける人物で、
「彼との旅の一部始終を撮影させてもらえるなら、悪くないか……」
と、私達はキャンプ用具一切を抱えて、
出発したのです。


日高から二風谷へ向かうバスは、
途中までしか通じていない。
終点で降りて、ポツンとあった雑貨屋で道を聞くと、
「なんとかなるよ〜」
と、おばさんの返事。


「まあ、テントは持ってるわけだし」と、
山の奥へと歩き始めると……
ほどなくして親切なおじさんに呼びかけられ、
結局、キャンプ会場まで運んでもらえてしまった。
北海道では、ホントに「なんとかなる」もんなんだなあ !?


8月後半というのに二風谷では、毎日冷たい驟雨が降り続けた。
祭りの情景や周囲の山野から、スナップ撮影し始めると…
独特な大きなフキや、植物のひとつひとつが、
不思議な存在感を放っているのに、
私は魅了されてしまったのです。
ひっそりと静かに、
太く豊かなエネルギーが息づいている…。


降り止まない雨に、テントの周りは泥浸し状態。
私達が焚火で濡れた服とからだを乾かしていると、
地元のアイヌのおじさんから話しかけられる。
……結局、廃車のバスを改造した、おじさんの家の離れに
「泊まりに来なさい」
という流れになったんだな。


北海道の人達のホスピタリティー
旅人を向かい入れる包容力には、驚かされる。

ずうずうしい私達は結局……
バスの離れに3泊もさせて頂き、
祭りにいるよりも長い時間、
石炭ストーブを焚いた部屋で、
おじさんとおばさんの話を聞いたのだった。


かつて厳冬期の吹雪の中を、何度も強制移住させられたという話。
その間に亡くなった方達の共同墓地を守るのが、
おじさんの役割でもあるという。
林の下に、独特な黒い木の墓標(イルラカムイ)が、
言葉なく立ち尽くしている場所へも、案内されました。



どうして北海道へ私は行くのか?ーー
http://www.unfold.jp/sapporo/sapporo0606.html

風に揺れているフキの葉のように、
大地がひそやかに発するバイブレーションが、
人を惹きつけ、癒しをもたらす土地。
もしかしたら……遙か古くの原始時代から、
北海道はそういう土地だったのでは、ないでしょうか。


歴史的にもいろいろな部族、いろいろな人達が、
自然な「流れ」としてこの地に惹き付けられ、集まってきたハズ。
そして現在も、そんな「地」と「人」のバイブレーションが、
震え動いているようにも、おもえる。


私はここに、触れ・学び・繋がりたいのです。