熊野へ

もともとは「原始林の写真を撮りたい」と感じる所があって八ヶ岳に行く予定だったのだが、
那智の滝の周りにも原始林があることを知り、
思いつきで熊野へひとり旅することにした。
▼参考HP 「高野・熊野を世界遺産に!」
リンクをクリックすると寺社や熊野古道の写真も見られるのでオススメ。

7/3(土)夜、「個人レッスン」の仕事をおえ大急ぎで荷づくりして、池袋発21時35分発の夜行バスで南紀勝浦温泉へ旅立つ。
計画も熊野についての情報も、移動しながら考えることにしたことと、
キャンプをするのか/山小屋泊まりにするのか−−中途半端な準備で出かけたことが、(良くも悪くも)今度の旅を不思議な味わいにしてくれたようだ。

勝浦の駅前から、まずは直行で那智大滝へ。
午前中から30度を越える気温で、バス亭から滝まで石段を降りていくだけでも、汗がほとばしる。
すでに荷物の重さを後悔している…。
なるほど那智大滝は素晴らしい。滝そのものがご神体とみられていることに、納得する。
滝を見上げていると、ベルガモットにジュニパーとレモンをブレンドしたような香りが、ほのかに漂ってくるようだ。
けれども大滝の周囲は厳重に保護されていて、どうやら原始林に入り込むことはできないらしい…。トホホ。

「どうしたものやら…」と感じつつ熊野那智大社をまわり、隣接した青岸渡寺へ。
西国三十三ヵ所の第1番札所でもあるここには、穏やかな風が吹いていた。
線香やお札を売っている叔母さんの声が、「観音さまのご縁ですな…」とやわらかく響く。
おそらく知的な障害を持っていると思われる子供達のグループがやってきて、お堂の前に佇んでいる。
そして世話役らしい男性が、ひとりの男の子に線香の煙を、手の平でかけている、「頭と…身体と…、ここと(股間部)……。さあ! これで元気になるよ。」男の子が瞬間、顔をほころばせる。

そうだよな。これで良いような気がする。
(いろいろな事情はあると思いますが)、障害やさまざまな問題をかかえた方達がこんな風に巡礼している、この場に吹く「やわらかい風」−−なんとも表現ができないけれど−−これで良いじゃないか、と感じられる。
この気配・この流れを感じて、旅をしてみようか…。

新宮からバスで、那智本宮大社へ。
本宮町の観光協会でたずねると、宿は手前の湯の峰温泉でとるしかないらしい。
「山を越えて歩いて湯の峰温泉へ行ったら」と言われる。「良い機会だから、少し熊野古道を歩いてみたら…」というお勧めである。なるほどなあ…。

重たい荷物を背負って冷や汗をかきながら1時間、大日山を越える。
夕暮れ時のにわか雨もあり、Tシャツは絞れるくらいにずっぽりと濡れている。
湯の峰のお湯はさらさらとして心地良く、ひとり湯船に沈んでいると、気分も疲れた筋肉もやわらいだ。