ひとも香りも「変化する存在」

今日は、心身両面でアロマをもちいる時の、もっとも基本的なことのひとつを、あらためて丁寧にご紹介したいと思います。
第1に、香りをかぐ時の反応は、本当に「ひとそれぞれである」ということ。
アロマをよくご存知でない方は、「ある香り」には「ある反応・効果」というように1対1で対応するーーと考えておられる方が多い、ようです。
アロマテラピーの入門書や雑誌等でもしばしばそんな風に書かれていますが…、実際には「ひとそれぞれ」の反応が起ってくるものです。私のワークショップ等で、ひとつの香りを皆でかいでいると、実際にわかり易いです。

あなたは、これをどう受けとりますか? 「アロマは頼りにならない」とおもいますか?
私はむしろ、この「ひとそれぞれの反応」が大切、と考えてます。ひとりひとりに現在進行形で起こっている「プロセス」は独特なものであり、かけがいがありません。
この「ひとそれぞれ」なプロセスにできる限り沿って対応できたら……素晴らしいです。

例えばローズオットー(薔薇)の香りをかいで、ある方は「やわらかく包まれる、温かく、リラックスする感じ」を身体感覚で感じ、
別の方は(あまり関係の良くない)実の母親を想い出して、すこし重たい気分になるかもしれない。
ローズオットーは、とくに複雑な多様な効果を持つ精油であり、「母性」の記憶を引き出す香りなのですが、こんな風にさまざまな反応が起こってくるわけです。

もし無理でなかったら、その香りとしばらく一緒にいて下さい。じっくり、たたづんでみて下さい。なれてくると共に、香りも変わってきます。同時に心身の反応も変化して来るでしょう。
ローズオットーの香りに母親を思い出された方は、「これまでの自分と母親の関係」を回顧するかもしれない。その中で幼児の自分が、「心底から母親を求めていたこと」を、フト! 想い出すかもしれません…。
今うまくいっていない関係だとしても、その底に「ただ、愛情を求めている自分」を発見する…。

香りと親しむ時、こうした自分の視点の変化・転換もしばしば起こります。香りのリラックス効果が、「いつもの見方」から離れて、より自由に見るのを助けるようです。
こうして香りの反応は「ひとそれぞれである」と共に、ひとの内面に「変化も引き起こす」ものなのです。

ここで感じられた「変化」を、言葉になる前のエッセンスあるいはバイブレーションとして、身体(感覚)全体であじわうこともできるでしょう。
そしてできる限り…なのですが、言葉にしたり、ラクガキしたり、日記に書いたり…何らかの形で表現・定着するのをお勧めします。これによって「気づき」や「洞察」を深めて、よりしっかりと定着できます。

ひとの心身は日々変化しています。ホルモンの分泌、神経系の機能、免疫系やDNAなどが、日々刻々と変化する身体のリズムを作っています。あなたの内で、複雑に重なるリズムが精妙なシンフォニーを奏でているのです。
つまり「ひとが香りをかぐこと」とは、こうして「『変化する存在』である『ひと』と『香り』が出会う」こと、なのです。