実録小説「インスタント焼きそばの香りーー彼岸の情景」


「インスタント焼きそば」の香りが、した…。


墓参りに向かう父親の車に、乗り込んだ瞬間だ。
そう、熱湯を入れて3分待ち、
ザザッとお湯を捨ててから、ソースや青海苔をふりかけ混ぜて食べる、
あの「インスタント焼きそば」。
乾燥キャベツがお湯で戻った、独特な「ムワッ」と蒸れた匂いも、
混ざっているようだ。


彼岸なので、数ヶ月振りに実家に帰ってきました。
「墓参り」というのは口実で、
たまには老いた父母の話を、聴いてあげようと。
(今まであまりにも親不孝して過ごしてきたので、
悔い改めた…わけなのです。ウルルルル。)


墓参りを済ませて、菩提寺から実家に帰り、
親子3人でビールで乾杯すると……
「インスタント焼きそば」の香りが、した。


アルコールに酔い始めた母親は、
「最近いろいろな人から、相談されるようになった」という。
もともとは人づきあいが苦手な人だけれど、
昔からの知人から、「話を聴いて」ともちかけられることが、あるらしい。


「ただ(共感的に)、聴いてあげると良いよ。」
息子(私)がこうした仕事をしている影響なのか?
それとも母の資質が開いてきたのか?
嗚呼、この母にして、この子あり……。
私のウツ気質も、もともとは母から遺伝した面もあるーーとみているのですが。
その時も空間に、「インスタント焼きそば」の香りが、した。


どういう脈絡だか………父は般若心経の話を始めた。
泣き上戸でもある父は目に涙を浮かべながら、
「無だ」「空だ」と言っている。
親子で般若心経やブッダの話をするなんて、はじめてだ。
どうしてだかわからないけど、悪くないカモ
……彼岸の親子の情景。
ここでも、「インスタント焼きそば」の香りが、した。



これは何だろう??? 
「インスタント焼きそば」は、私たち親子にとって何か意味があるのだろうか?
もしかしたら………そうかもしれないな。
これがワークなら、「『インスタント焼きそば』の香りをよ〜く感じてみたら」と
話す所だ。
そして、「インスタント焼きそば」の香りが、
私たち親子に何かメッセージを伝えているとしたら……??


ウ〜〜ン。
ーー「そんなに肩にチカラを入れないで、生きようよ」と言われている気が、する。
あの独特な、乾いた、スパイシーな香り。
そして近づきやすいカジュアルさ。
チープだけど、確かにオ・イ・シ・イ。


思い起こせば……
インスタント・ラーメンを製造する会社に、父は長く勤めてもいた。
父の汗の匂いは、インスタント麺のそれと混じり合うもの。
ここでも、香りは記憶にふかく結び付いている。
「インスタント焼きそば」でも、イイジャナイカ
「インスタント焼きそば」のエッセンス、シンボリズム(象徴)というのもアリ、
かもしれません。


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今回のメルマガ原稿は趣向を変えて、
笑える小説風にしてみました。
いかがでしょうか?