60兆個の細胞が聴いているーーウォンさんの即興ピアノ


わたしの内側で、遠く遙かに響いていた、
音の連なりが「そのまま」
眼前に現われたようだ……
ウォン・ウィン・ツァンさんのソロ・ピアノでの即興演奏を聴いていると、
そんな気がします。


ドビュッシーにも、
ラベルにも、
バッハにも……みつけられなかった「何か」に
ここで再会するように。


音のしたたり。
音の流れ。
抽象であることも具象的であることも、
「意味」から自由にとき放たれて。


瞑想状態で即興演奏されたウォンさんの音は、
スピーカーの前で聴く者も、
瞑想的な心とからだの状態に導きます。



これは何だろう、
「聴く」ーーとは、元々どういうことなのだろう…。


この音を私はどこで聴いているのか……
脳の内部、ニューロンの交錯する小宇宙なのか、
私の深い意識でうづくまっている、「内なる子供」なのか。


いつのまにか身体が、ユラリユラリと
動き始めている。
そう……細胞のひとつひとつが、
響きが染み入るのを、「聴いている」ようだ。


「聴く」ことの、とほうもない遠大さ、豊かさ。
「耳」というより、60兆個の細胞が聴いている。


音の雫にときほぐされて、
ただただ呼吸している赤ん坊に
帰る。



ウォン・ウィン・ツァンさんのHP
試聴もできます。
http://www.satowa-music.com/index.html