「とてつもなく大きな山」の物語り

もしかしたら……誰もが同じ山を登っている、のかもしれない。


ある人は東から、川の流れを遡り、山を登り始めた。
ある人は北から、深い森の中、山を登り始めた。
ある人は西から、荒れ果てた砂漠から、遙かな山を目指した。
ある人は南から、温かな海から、山を登り始めた。
そして誰もが、山麓の暗い森林を歩いて、「孤独である」とおもっていた。


次第に標高が高くなり、尾根の上に出た。
遠くの稜線上に人影のようなものが動いているのをみつける。
でもその人と自分の間に繋がりは感じられない…。
なおも孤独に、歩く、あるく。


山の背骨のような尾根上を歩き続けて、
小高いピークの頂上に立つ。
道はまだまだ先があるけれど……、
東西南北いろいろな方向からの尾根道が、ひとつの頂上に繋がっているらしいことに気がつく。
向こうの尾根上を歩いている誰かと、自分は同じ山を歩いているのかもしれない。
ただ、とてつもなく山が大きく広いのだ……。


それぞれに違う流儀で、違うスタイルで山を登っている。
それでも頂上に近づいてくると、やがて出会うーーということ。
もしもこの山のはるか上空から見下ろしてみたら……、
それぞれの人影はどんな風に見えるだろう?


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