9年振りの旅先からの便りーーア・プリミティブ・ガイド・トゥ・ビーイング・ゼア


唐突に手に入った休日。数週間振り、だろうか。
「この頃、ハートが震えるような音楽はめったに無いな〜」と思いつつ、
ちょっと憂うつな気分でタワー・レコードを訪れる。


すると視線の高さの棚に、ジェリーサの新アルバムが並んでいるじゃないの!
90年代に発表された『Galactica Rush』や『Language Electric』は、
カサンドラウイルソンミシェル・ンデゲオチェロと並んで、
私も愛聴し続ているもの。
3人とも声に独特な官能=「声の肌触り」を感じさせる人ばかり、
なのがわかりますね。フフフ。


以来彼女の音源を探していたのですが、ようとして何もみつからず…。
それが9年振りのCD(しかのDVD付)として、目の前に。
こんなラッキーなことも、あるんだね。
まるで今日の天気みたいだーー
朝は曇り空、突然の雨、のち快晴。



初回限定で付いてくるドキュメンタリーDVD『One Week with Jhelisa - Rediscovering America』が、とても興味深いです。
ミシシッピ州ジャクソンで生まれて、
高校卒業後、「おばあちゃんを訪ねたら…」と、まとまったお金を渡された時、
ジェリーサの冒険的な人生は始まった。


そしてイギリスに短期滞在の予定が、
90年代ロンドンの、アシッド・ジャズ・シーンで「フレンドリー・プレッシャー」がヒット。
この後アフリカ、ブラジルの旅を経て、
アメリカに10年振りに帰国。
3rdアルバムとしてニューオリンズの音楽文化をテーマに製作していたけれど、
ハリケーンカトリーナ」の影響で延期。
この経験を乗り越えてこの4月発表されたばかり、なんだな。


ニューオリンズの公園、大きな樹木の木陰で、
これまでの人生の軌跡を語るジェリーサ。
アフリカから奴隷達が運ばれてきた、「ごった煮」文化の街ニューオリンズ
その地が、ジェリーサの活動に合っているのは、納得できる。


9・11そしてイラク戦争(というより米・英の侵略だろう)以降の、
アメリカの奇妙な変化を、ジェリーサも肌で感じていて、
「お腹はいっぱいだけれど、心は空っぽ」と評している。
その語り口は、熱を帯びているけれどクールで、
彼女の作る音楽とも通じている。


彼女がグローバルに、
しかも独特な力強さを持った「旅を続けている」のが、わかる。
それが音楽と声の深さも、
豊かでスパイシー、そして複雑な味わいのワインのようにしている。
9年振りの、旅先からの便りのように。
こんな「旅」も、あるんだね。


▼ここで数曲を視聴できます。
http://www.inpartmaint.com/nebula/nebula-releases.html