「トリックスターあるいは「宇宙的バカバカしさ」との遭遇


●奇妙なオジサンとの接近遭遇

このところ……部屋のかたずけと模様替えを、
私はすすめています。
「本当に必要なものだけの、シンプルな暮らしにしよう」と整理してみると、
次から次に不要品の山が生まれてきて、
狭い部屋の空間を埋めてしまう…。


そんな時まさに、
「テレビ、冷蔵庫…なんでも引き取ります〜」という拡声器の音が
外から聴こえたのです。
私は部屋を走り出て、音の主である軽トラを追いかけました。


運転していたのは、時代はずれの眼鏡に長髪の……
もしかしたら1960年代ヒッピーの名残の人なんだろうか……
憎めない風情もある50歳代のオジサンでした。
軽トラの荷台の荷物の中では、
黒光りしている高さ40cmくらいのホテイ様のような置物も、みえます。


そして壊れかけたテレビや、ウチには大き過ぎるテーブル、
CDのかからなくなったミニコンポ等を、
軽トラの荷台に積み込んだのです。


『ちょうどヨカッタ。おかげで少しスッキリ〜」
と胸をなで下ろしていたら、
オジサンはメジャーをテレビやテーブルにあてる動作をして、
「2万円ですね」ーーと言われる?!


コラコラコラ! 「はい、そうですか」と、
不用品の引き取りに2万円もさし出す人がいるのかなあ?
しかもこちらが渋っていると、
「1万5000円」、「おまけして1万円でいい」ーー
とディスカウントする始末。


私だって自慢じゃないけど、自転車操業の毎日、
不用品の処分にたとえ1万円だって出せないゾ!
まだ残暑の厳しい午後、汗を流しながら荷物を再び軽トラから降ろし、
もとの部屋に戻したわけです(涙)。


こんなコトってアルのですね〜。
このオジサンのような仕事=あえて言えば「ビジネス・モデル」って、
成り立っているのでしょうか?
振り返ればーー最初に料金設定等を確認しなかった私もよくないのですが、
ナンニモ言わないオジサンにも、もちろん問題アリ。


そして、「こうして起こっていること全体」が何かの意味を持っているとしたら、
自分に何を伝えているのか?ーーとも洞察してみたいのです。


どういう形であれ「仕事」として、
最初に「お客様=クライエント」に充分に説明し、「同意」を得ることの重要さーー
を、まずは私としては反省させられました。


●宇宙的バカバカしさのあらわれ

でもなあ〜、あのオジサンの悪びれないキャラクターって、何だろう?
それは「宇宙的なバカバカしさ」あるいはトリックスターのあらわれ
ーーかもしれません。


「道」は区画整理された、まっすぐなコトばかりではない。
ひとはしばしば性急に、「答え」を求め過ぎていないか…。


道の途中には「宇宙的バカバカしさ」も、ころがっている。
黒光りするホテイ像のように、
ナゾの笑みを浮かべているかもしれない。


曲がりくねった道も、
たのしみながら歩いてみようよ
ーーそんな風にも、感じられるのです。


トリックスターTrickster)ーー神話や物語の中で、
神や自然界の秩序を破り、物語を引っかき回す
いたずら好きのヒーローとして描かれる人物のこと。
(例:『夏の夜の夢』に登場する妖精パック)
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